たいしたものではないのです

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肘への負担がかかる投球動作について

ここで紹介しているのは肘に負担のかかる動作の中の一部であり、これらの要素を満たさなかったからと言って必ず故障しないというわけではありません。

同様にモデルピッチャーのマネをしたからといって必ず故障するわけはありませんし、必ず故障しないわけでもありません。

動作のリスクリターンを正しく理解した上でどうするかは個人の選択です。

 

OK?

 

 

 

 

 

 

1.(前足が着地して)投球腕側の肩が回転し始めるときに肘から先の腕が地面と垂直まで上がってきていない

一番わかりやすく肘から先(以下前腕と表現)の外旋の角度が大きくなる動作

踏み出した前足が着地するタイミングで投球腕側の肩の回転が始まるのが一般的だが、この時に前腕が地面と垂直になっていないと肩の回転により腕のスピードが最も速くなるタイミングで前腕が急速に外旋することになる。(ボクシングのパンチを繰り出すように手の甲を押し出していては強いボールを投げられない。掌をキャッチャー側に向けることになるので、どこかのタイミングで必然的に前腕は直立することになる。)

この動作は肘を支点とした反力を生み出すため、より強い力をボールに伝えることができるが、同時に支点となる肘には強い負荷がかかる。

 

 

館山昌平 (複数回のトミージョン手術を経験) 

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 ダルビッシュ有(トミージョン手術前)

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2.(前足が着地して)投球腕側の肩が回転し始めるときに肘の角度が90°より内側に入っている

この動作は上記のものと似ているが、前腕の外旋運動に加えて遠心力による負荷も発生する。

反力に加えて遠心力も発生するのでもちろん球速は上がるが、やはり肘への負担も上がってしまう。

 

 

和田毅 (1と2の複合型)

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3.(前足が着地して)投球腕側の肩の回転が始まるタイミングでボールが2塁側を向くように腕がひねられている

この動作は等速の映像で見ていると一見してわかりにくいが、スローや静止画で見ると確認しやすい。

自分の身体で実践してみるとわかりやすいかと思うが、この状態からボールを投げようとすると肘に強い負担がかかると同時に腕の外旋運動が抑制される。

腕の外旋が抑制されるということは、結果的に12の動作と同じような現象が発生するため肘に負荷が発生する。そしてやはり球速が上がる。

 

 

田島慎二

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ウォーカー・ビューラー

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wikipediaのトップにあるこの画像が一番わかりやすい)

 

引用元ja.wikipedia.org

 

 

 

4.前足が着地するまたはその直前でグラブ側の腕が空中に浮く、開くような形から下側に引き下ろす

この動作に関してはこれそのものが根本的な問題であるわけではないが、結果的に1の動作を引き起こしやすくなる危険性がある。

グラブ側の腕を抱え込むようにせず開いたままにするとグラブ側の肩が回転方向に引っ張られやすくなり、結果として投球腕側の肩も引っ張られて早期に肩の回転が始まりやすくなる。

肩の回転が早期に始まってしまうと必然的に前腕が上がり切っていない状態から肩の加速が始まることになり、それは結果として1の状態を生みやすい。

また、グラブ側の腕の支えが弱くなることにより上体のバランスをとることに筋力を割いてしまいやすくもなるため、肩の並進運動に十分な力を発揮できずに遠心力依存の投げ方にも繋がりやすい。

俗に言われる「肩が開く」という現象の原因の一つでもある。

 

 スティーブン・ストラスバーグ(トミージョン手術前)

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1に該当しないモデルピッチャー

 

山本由伸

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ジャスティン・バーランダー

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P.S. 最近一部で知名度が上がってきているインバートWと呼ばれる動作は結果的にこれらの動作を引き起こしやすいですが、インバートWそのものが本質的な問題であるわけではありません。

対として挙げられるスタンダードWであってもこれらの動作を起こしている投手はいる(ウォーカー・ビューラーはまさにその例)ので、「インバートW=悪」というような考え方は本質的な問題から遠ざかっていると考えます。